2024.10.03企業で行うべき防災対策

企業が行うべき防災対策には、個人とは全く異なる側面があります。人命尊重は当然、優先されるべきですが、それとは別に事業の継続などにおいても責任を果たさなければなりません。

ここでは企業防災、BCP(事業継続計画)など企業の防災対策について解説します。

企業防災とは?

企業防災とは、地震など自然災害を想定して企業が平常時から計画を立て、行っておくべき対策のことです。
企業防災には大きく分けて2つの側面があります。1つは従業員や顧客の安全を守るための防災活動、そしてもう1つは災害で被害を受けても重要な業務を中断させず、あるいは中断したとしても短い時間で業務を再開することを目指す「事業継続」です。
特に後者を実現するために必要とされるのがBCPと呼ばれるものです。

BCP(事業継続計画)とは?

BCPとは自然災害、あるいは大規模テロなども含めた緊急事態に備えて、企業が事業の継続、あるいは事業の早期復旧を達成するために、平常時に行うべき活動と、緊急時に取るべき手段、方法について取り決めておく計画のことです。
なぜ企業にとってBCPが必要かと言えば、まずは基幹産業が停止すればその間の利益を損なうこと、そして事業が停止したままでは取引先や顧客の信用を失い、ひいては株主からの評価も低落し、企業価値が損なわれることになるからです。
逆に、緊急時でも速やかに事業を継続または復旧することができればインフラを維持することなどによって社会に貢献することができ、自社に対する評価を上げることに繋がります。
特に欧米ではBCPはこのように他社と差別化するための経営戦略の一環として捉えられ、企業が積極的に取り組み、推進するよう奨励されています。

企業が行うべき地震対策

大災害に遭遇した際にまず優先されるのは人命を守ることです。これは企業も同じですが、企業では次いでBCPのような事業継続のための方策を、平常時に策定したマニュアルに従って遂行することとなります。例えば大地震が発生することを想定すると、具体的には企業は以下のようなことを行うことになるでしょう。

地震前

事業所内の什器や家具の転倒・落下・移動防止対策、ガラス飛散防止対策、自社内や近隣の安全な避難場所の調査、救急用品、救命工具、水・食料、毛布、非常用電源などの備蓄と用意、災害情報入手手段の確保、機密書類の金庫への保管など。
また災害対策部の設置、コンピュータのシステムがダウンしたときの復旧またはバックアップシステムの運用方法、業務スペースの確保、要員の集め方、迅速な安否確認の方法といった各企業の事業内容に則したマニュアルの作成などを行います。

地震後

災害対策部による被害状況の把握、危険物の排除、怪我人の救出、従業員の安否確認、火災など二次災害の防止と情報捕捉、避難の指示などを行います。さらに怪我人の手当て、帰宅困難者の受け入れも企業に課せられます。
さらに被害状況によって、BCPに則した業務の再開活動を行うことになります。ライフラインの復旧、ダウンしたシステムの再起動、食料品や生活必需品の販売もしくは配布、銀行などにおいては預金の引き出し作業なども順次再開していきます。

防災対策を行っていない企業のリスクとは?

防災対策を怠れば、助けられたはずの人命が助けられなくなることが起こり得ます。災害時に指揮を執るリーダーがいない状況ではパニックが起きる確率も高くなるでしょう。
冷静な判断力、統率、お互いの協力体制などが失われ、火災など二次災害が広がりやすくなることも考えられます。そのような状況下では機密情報や機密書類が火災で消失する、あるいは盗難されるリスクもあります。
事業継続や再開も行われなければ、地域への貢献も全くなされないままです。結果、災害からの復旧が叶った後でも社会的信用を失い企業価値は低落するでしょう。たとえ会社のビルに甚大な被害がなかったとしても、会社の価値は大きく傷つく結果となるかもしれません。

このように、企業の防災対策にはさまざまな意味があります。普段から「企業としての防災」について考え、意識を高め、準備をしておくことで、日常的に安心して働くことができ、事業継続対策ともなります。機密書類などの重要なものは普段から金庫で保管しておくと、いざというときに迅速な行動ができるでしょう。